「……むかつくってわかってるなら、なんで読むのよ……」
本の陰でぐちぐちと文句を垂らす私に、りさは呆れた目をした。
…だって。
「…昨日……ちょっと、あって」
「ほう。あたしが帰ったあとに?」
「……うん」
「お姉さんに話してご覧なさいよ」
「……えっとぉ、シロがぁ……ふっ、ふふふふふふ」
「………………」
ああヤバイ、思い出すだけでニヤけが止まらないわ。
だって、あんな綺麗な瞳をまっすぐにこちらに向けて。
見たことない、意地悪な笑みで。
私が変なことを訊いたから、きっとあんなことになってしまったのだろうけど。
近年稀に見る進展よ、これは。
「…結局、あいつが彼女を作らない原因はわかったの?」
ここは教室だからか、りさも『真白』という言葉を口にするのは控えている。
私がシロシロ言ったって、犬の事か何かにしか思われないだろうけど。



