…なんてことは、ここが教室である以上、胸の奥にしまっておくしかないのだけれど。
私はにっこりと笑顔を浮かべて、「漫画がね、読みたくなったの」と優しい声色で言った。
「…へえ。それで?」
りさの顔が、あからさまに気持ち悪いと言っている。
我慢なさいよ。ここは教室で、私はお姫様なのよ。
「…そしたら、ね。なんだかもう、だんだん、むかついてきちゃって………」
ふふふ、と本で顔を隠しながら笑う。
りさは薄気味悪そうに眉根を寄せて、目を細めた。
「…ちなみに、どうして?」
私はパラパラと読んだ漫画のページをめくって、眺める。
…コッテコテの、王道少女漫画だ。
一生懸命な女の子(そこそこ可愛い)と、人気者の男の子(イケメン)が出会って、途中ライバルに邪魔されながらも、惹かれあっていく。
そんな、ありきたりなストーリー。
「……ねえ、りさ?」
いわゆる『胸キュン』シーンのページを眺めながら、ぽつりとつぶやく。
…別に、いいと思うのよ。
ヒロインは健気で可愛いし、ヒーローはかっこいいし。
けど、でもね。



