香ばしい匂いに、思わず熱のこもった溜息がこぼれる。
私がひとり、いつものソファでカップケーキを食べていると、その横のテーブルの席についたふたりが話し始めた。
りさはシロが用意してくれたコーヒーを飲みながら、にっこりとした笑顔で「特に用はないのよ」と言う。
…あくまで、さりげなーく聞くつもりなのね。
ぺり、とカップの紙を破いて、中身にかじりつく。
…はぁ、やばいわ…
「…シロ、なにこれ、美味しすぎるわ」
「あ、ほんと?ありがと」
そう言って、柔らかく笑う姿はとっても格好良くて。
…まっしろ。
裏表のない、綺麗な笑顔だわ。
それをいつか、私じゃない女の子だけに、向けるようになるのかしら。
りさは、じっとシロを見つめたあと、世間話を始めた。
学校のこととか、お菓子のこととか、勉強のこととか。
「そういえばもうすぐ、テストあるわね」
「…そうだね………」
そう言うと、ふたりは揃ってこちらを見てきた。
未だにカップケーキにかじりついている私に、はぁと溜息をつく。
なによ、ふたりして!?



