「私の家ね、両親が一度離婚してて、今のお父さんは本当のお父さんじゃないの」
シロと、りさしか知らないこと。
竜崎くんも家庭のことで苦労しているからか、さして驚きはしなかった。
彼は「…ああ」と静かに相槌を打って、目を細める。
「シロのご両親も、離婚してるの。ただ、あちらは再婚してなくて、お父さんとふたり暮しだけど…」
小さい頃の、遠い昔の話だ。
けれど私とシロには色濃く残っていて、私達をつなぐ、絆のひとつでもある。
「…まだ私達の家が離婚してなかった頃から、私の母親とシロの母親は仲が良くて。お互いの家を行き来するのなんか、当たり前だったわ」
両親はふたりとも共働きで、シロの家もそう。
だからよくどちらかの家に集まって、一緒に料理をして、ふたりきりで、ときにはりさもいれて、ご飯を食べたりした。
両親が離婚する直前、小学四年生になったばかりの頃に、お互いの母親から合鍵を渡された。
自分たちが留守の間、私達が不自由しないように。
それはシロのお母さんが家を出た今でも、続けられている。
そうやって私達は、寂しい家の中で支え合って、楽しく生きていた。



