秋の風が吹いて、少し寒い。
遊びまわる園児たちをぼーっと見つめていると、横から「…なぁ」と声が聞こえた。
そちらを向くと、竜崎くんが真剣な目をして、こちらを見ていた。
「なんで姫宮は、他人に『ミア』って呼ばせるんだ?」
その質問に、私は目を細めた。
…たぶん、正人くんに『ミア』と自己紹介したから、不思議に思ったんだろう。
「…………」
「学校でも、みんな『ミア』としか呼ばないよな。…進藤、だけなんだろう。下の名前を呼び捨てにするのは」
「…うん」
私は小さく笑って、目を伏せた。
そう。
私を『美愛子』と呼べるのは、シロだけ。
…この世界で、ただひとり。
進藤、真白だけだ。
「シロ以外のひとには、『ミア』って呼んでって言ってるの」
「昔からなのか?」
「そう。小学生の頃からよ」
「何故…かは、聞いていいのか?」
気まずそうに、竜崎くんが見てくる。
私は「今更でしょう」と笑った。



