「姫宮。今日は、脅したりして悪かった。お前のおかげで、ゆっくり買い物できたよ」
「なら、まぁ脅されてでも来た甲斐があったわね。全く、そんな事情があるなら、初めからそう言えばいいのに」
「いや、俺は見た目がこんなだしな。学校でのお前に話しかけるのは、気が引けたんだ」
それを聞いて、なんだか少し悲しくなる。
学校での私の猫かぶりは、人間関係を良好に保つためのものなのに。
そのせいで、私に話しかけることを遠慮してしまう場合もあるのね。
ひとつ学んだわ、と心の中で頷く。
竜崎くんはもう一度私にお礼を言った後、正人くんと並んで帰って行った。
私は当然、シロと帰ったのだけれど。
何故か彼は家に帰り着くまで、一言も喋らなかった。
…私は彼の不機嫌な横顔を眺めながら、その理由を悶々と想像したりしていた。
