「…で?そろそろ、事情を説明して欲しいな」
竜崎くんはビクリと肩を跳ねさせて、「あ、ああ」と気まずそうに目線をそらした。
公園の門のそばに寄りかかり、ふぅ、とため息をつく。
重苦しく、彼は話し始めた。
「…その…俺の家さ、早くに母親が親父と離婚して、三人暮しなんだよ。だから母親ひとりで仕事頑張ってて、家のことはほとんど俺がしてんだ」
なるほど。
大変なご家庭だわ…さっき、まるでお母さんみたいと思ったけれど、あながち間違っていなかったようね。
気の毒そうな顔をする私を見て、竜崎くんは苦労のにじんだ苦笑いを浮かべた。
「正人のことも、俺が面倒見てんだ。今日みたいなタイムセールのときは、いつも保育園に迎えに行くの遅くなってたし…正人は文句言わねえけど、絶対我慢してると思ってな」
だから、今日は私に頼んだのね。
こんな理由を訊けば、さすがに責める気も起きなくなる。
弟思いの、いいお兄ちゃんじゃないの。
私も鬼ではないし、今日のことはチャラにしてあげようかしら。



