………シロだ。
間違うことのない、大好きな人の匂い。
私は一気にドキドキしてきて、お腹に回った左腕に目を落とした。
彼の右腕は、私の腕をつかんでいる。
「………シロ……?」
「やっと捕まえた」
はぁ、と彼がついたため息が、私のうなじをかすめて、思わずびくりとする。
シロはそんな私に小さく笑って、私の体を振り返らせた。
今度こそ、見上げれば彼の顔がある。
……なに、なに、なんなの。
こっ、こんな暗いところに連れ込んで。
扉の隙間から光が漏れているとはいえ、資料室のなかは暗くて、余計に心臓が音を立てた。
ーートン。
不意に、壁際に背中を押し付けられる。
逃げ場を失った私は、静かに見下ろしてくる彼の綺麗な顔を、うろたえながら見つめ返した。
「し…シロ」
「今日ずーっと美愛子、俺のこと無視してたよね。みんなの前で避けられた時は、さすがに驚いたよ」
うっ……。
なんだか、怒ってるみたい。
そりゃ、あんなに避けまくれば、怒るわよね。



