「なにそれ。俺よりいい男なんだろーな?」
「どーでしょー」
「ミアちゃん、もしかして好きな奴いんのー?」
「さぁー」
いつも通りの調子でニコニコ笑うと、北川くんはさっきの気まずそうな顔をやめて、笑ってくれた。
「ミアちゃんは、意外に秘密が多いよなぁ」
「そう?」
「そーだよ。まぁ、諦めないけど?また今度誘うから」
うーん、意外にしぶとい。
北川くんは悔しそうに唇を尖らせたあと、通りかかった友達に呼ばれて、そちらへ向かって行った。
私はその姿をなんとなく見つめて、そして歩き出そうとする。
けれど、できなかった。
突然、ガラッと勢い良く横の扉が開いたと思えば、ぐいっと腕を掴まれる。
周りに人はいなくて、助けてくれる人はいない。
驚いて声を上げる間もなく、私は書類や教材だらけの狭い社会科資料室へ、引っ張り込まれた。
「な、な、なにすっ………」
目の前で扉が閉められ、ガチャン、と鍵をかけられる。
背中に感じる気配に、男子だ、と理解する前に、ふわりと鼻先をかすめた匂いに、私は気づいた。



