……デート、ね。
確かに北川くんとは何度か話したこともあるし、仲はいい方だと思ってる。
でも、彼から特別な好意を向けられたことは、一度もない。
ふたりで街を歩こうなんて、結局は『可愛い女の子とデートしてる自分』が欲しいだけだ。
…わかるのよ、それくらい。
いくら純粋そうに見えるからって、あんまり私のこと、ナメないでほしいわね。
相手が本気で自分のことを好いていてくれているか、なんてすぐわかるんだから。
私はやんわりと、近づいて来た彼の肩を押しのけた。
そして、「ごめんね」と言う。
私はぎゅう、と手のひらを握りしめて、柔らかく笑った。
「ホットケーキは、大好きなひとが作ってくれたものしか、食べないって決めてるの」
……私だけの、ものに。
したかった。
大好きなひとが作ってくれる、大好きなホットケーキ。
私だけの…ものに、したかった。
北川くんは驚いた顔をして、気まずそうに苦笑いした。
「そ…そっか。あー…えっと、それって男?」
「秘密」
無邪気にニッコリ笑うと、北川くんは不満げに「えー?」と笑ってくれた。



