どうして中庭なのかというと。
「…まさかシロから、声をかけてくるとは思わなかったわ…」
今朝の混乱はだいぶ収まったけれど、今度は別のことで困っている。
シロが自ら、私と話そうと声をかけてきたのだ。
しかも、ことあるごとに。
一度目は二限目の前の休み時間に、教室へ来て『姫宮さん』と呼んできた。
私は『職員室に急用があったんだー』なんて嘘をついて、逃げた。
二度目は三限目の前の移動教室の時、『美愛子』と声をかけてきた。
私はクラスメイトのいるほうまで走って声をかけ、シロを無視した。
三度目は…昼休みが始まった直後。そう、ついさっき。
今度は逃がすまいと急いで来たのか、息を切らした彼は教室へ来て『姫宮さん』と呼ぶ。
不自然ながらもどうしようもなくて、私は今度こそクラスメイト達の目の前で彼を無視し、りさと一緒に中庭へ逃げて来た。
だってまだ、返事を聞く勇気なんてない。
結局、柳田さんと彼がなんにもなかったとわかっても。
シロが私と付き合う保証なんて、どこにもないから。



