瞳に涙がじわりと浮かんだ顔を、ばっと上げる。
驚いた顔をしたシロを、じっと見つめた。
……もう、いい。
物語のヒロインになれなくったって、構わない。
「…シロのホットケーキ、他の女の子が食べるの、やだ………!」
私は、シロが欲しい。
目を見開いた彼と目があって、一気に顔が熱くなった。
恥ずかしくなって、いたたまれなくて、ぱっと顔をそらす。
ああ、ダメ。
まだ告うつもりはなかったのに。
こんな、理想の告白シチュエーションとは程遠い状況で、言う言葉なんか決まってないわよ。
「……ごめんなさい。今日はもう、か、帰るわ」
急いでバサバサと教科書類をまとめて、胸に抱える。
シロはさっきまで驚いて何も言えなかったみたいだけれど、すぐにハッとして「美愛子」と声を出した。
「あのさ…」
「べっ、勉強見てくれて、ありがとう!また明日、学校でねっ」
返事なんて、わかりきってる。
あんなことまで言って、さすがに私の想いに気づかないほど、彼も鈍感じゃない。
私自身、引き起こしてしまった事態に混乱してるのよ。
今は、返事を聞く勇気はないわ。



