懸命に息を整えながら、足元の草を見つめる。
すると頭上で、ボソッと声が聞こえた。
「…それは、もとからなんだけど」
………え?
驚いて、彼を見上げる。
シロは感情の読み取れない表情で、私を見ていた。
……今の、聞き間違いかしら。
『それは、もとから』って…言ったわよね?
それは、って…何?
「…シロ?今、なんて」
「なんでもない。…たまにはいいじゃん、意地悪くらい」
シロはそう言って、にっこりと笑う。
その顔は、いつものまっしろな彼の表情で。
……え?
「…し、シロ」
「そろそろ戻ろうか。美愛子、先に行きな。俺は後から戻る。ふたりでいたところ誰かに見られたら、色々まずいでしょ」
今一応授業中だし、とシロが笑って言う。
ちょ、ちょっと。誤魔化さないでよ。
そう思うけど、彼の表情はもう私の質問は聞き入れてくれそうになくて。
「…………シロ」
「ん?」
コーヒー缶を握りしめて、彼を見つめる。
…シロが何を考えているのか、さっぱりわからないけど。
まだ、いいわ。
私もまだ、告うつもりはないから。



