「あっ――」

「どうしたの?」

「プリント忘れてきちゃった――ごめん、先に戻ってて」



次までに歌詞を覚えておくようにと言われていたため、面倒臭かったが第二音楽室へとプリントを取りに戻る事にした。


曲の解説みたいなのも書いてた気がするし、次の授業の時に聞かれそうだしね。


第二音楽室にはもう誰もいなくてシンッと静まり返っていた。


そう言えば――最初は私も遠慮してあまり話し掛けなかったから、ご飯を食べてる時は息苦しさを感じる程静かだったな。


プリントを取り、音楽室を出ようとしたけどできなかった。


薫君はいないのに、この場所から離れてしまう事が無性に名残惜しくてたまらなかった。