Purewhite Devil

『具合悪いのか』

「――え?」

『飯が減ってない』



後十分もすればお昼休みが終わってしまうというのに、私のお弁当は三分の一も減ってない。


せっかく今泉堂君と一緒にお昼食べてるのにボーッとするなんて勿体ない事した。



「ちょっと早い夏バテかなぁ?最近食欲なくて」

『無理して全部食えとは言わねぇけど、もう少し食え』

「うん」



あの日乃愛と呼んでくれて以来、一度も名前を呼んでくれない。


名字すら呼ばれていない。


名前がなくても会話ってこんなに違和感なくできるんだなと思った。



「天使っていると思う?」

『何だよいきなり』

「別に――なんとなく聞いてみただけ」



呆れたような顔をされ、私はお箸をくわえたまま下を向いた。



『いねぇと思う』



パッと顔を上げると、泉堂君は無表情で鍵盤を撫でる様に触っていた。



『天使とか神がいるなら、もっと世の中幸せな筈だろ。いたとしても奴等は何もしてくれねぇよ』



どうしてそんなに苦しそうな顔をしてるの?


まるで天使や神様を憎んでいるみたいに。