第二音楽室にたどり着いたはいいが、私の息遣いはみっともない程荒々しかった。


私が入ってきた事に気付いてる筈なのに、泉堂君は鍵盤を眺めながら華麗に指を動かしている。


な、何で!?


初めてここで会った時より怖いんだけど――。



「あッッあの――」

『いいのか』

「――へ?」



言葉を遮られた上によく分からない事を言われ、何とも間抜けな声が出てしまった。



『男のとこ戻んなくて』

「ど、して?」

『早く戻れ。勘違いされたくねぇし、今日は集中してぇから』



ヤバ、い――泣きそう――。



「そうだよね、ごめん。でも伊集院先輩とはそんな仲じゃないから――って関係ない、か」



私は泉堂君に背を向け唇を噛み締めた。



「邪魔してごめんね」



早く出なきゃ。


そう思うのに足が動かない。


今出たらもうここには来れない。


もう泉堂君といられない――。