伊集院先輩のクスクス笑う声がして、何故だかカッと顔が熱くなった。


もしかして面白がってる!?



『どうして彼女がいると思ったの?』

「女の子には優しいけど、連絡先教えたりだとか遊んだりはしていないって聞いたので、彼女いるんだろうなって思ったんです」



なんかこのシチュエーションまるで私が伊集院先輩の事が好きみたいじゃない!?


どうにかしてこの奇妙な雰囲気を壊したくて、無駄にお弁当にがっついた。



『彼女はいないけど好きな子はいるよ』



私は手を止め口の中のものを飲み込み、伊集院先輩の顔を見た。


思わずドキッとしてしまう程の優しい笑顔。



『好きだよ、乃愛ちゃん』

「わた、し――?」

『そう、乃愛ちゃん。食堂で男と一緒にいるのを見てわざと話し掛けたんだ。我ながら子供っぽかったかなって後で反省した』



伊集院先輩の指が恥ずかしがっている私の髪を掴まえた時、また懐かしい風が私を包み込んだ。


煩く騒いでいた心臓が不思議と落ち着いていく。