花壇の前の長椅子に並んで座り、私は仕方なくお弁当箱の蓋を開けた。


流石お坊ちゃん。


お弁当箱も中身も豪華。


まるでプチお節。



『良かったらどうぞ』



ちょっと食べてみたいという欲求に勝てず、私は卵焼きを摘まんだ。


んっ!?


まさかのだし巻き玉子。



「――美味しい」

『良かったらもっと食べて』



本当、悪い人じゃないんだよね。


でもちょっと強引というか何と言うか――。


こんなに楽しそうな笑顔見せられたんじゃ、しょうがないかって思っちゃうじゃないの。



「私とお昼食べてて平気なんですか?」

『どういう意味?』

「彼女いるんじゃないんですか?」



キョトンとした顔をされ、私までキョトンとしてしまった。


この反応は一体――?


だけど伊集院先輩は直ぐにいつもの柔らかい表情になり口元を緩めた。



『彼女なんていないよ』

「――え?」



なんて神々しい微笑み!!


私は伊集院先輩の顔を見ていられず咄嗟に膝の上にのせているお弁当に目線を落とした。