驚いて固まっていた私も段々と状況を理解し、頭も冷静さを取り戻してきた。



「あ、あの――はなッッ」



「離して下さい」と言おうとした時、突然大きな音がして私は咄嗟に目を瞑った。


体が軽くなり、下を向いたままそっと目を開けると、土屋先輩が傷だらけで倒れていた。



「土屋先輩ッッ!?」



慌てて屈み、体を揺すりながら声をかけるが反応は返ってこない。


土屋先輩の周り、そして廊下中に割れたガラスが散らばっていた。


何でガラスが!?


顔を上げて周りを見渡すと廊下のガラスが綺麗になくなっていて、私は目を疑った。


何――風で割れた、の?


信じられなくて窓ガラスのなくなった窓枠を見ていたら、今度は外から勢いよく風が吹き込んできて私は目を細めた。


その風は私の体を抱きしめるように柔らかく、そして温かかった。


懐かしい――そんな気持ちで胸がいっぱいになった。


風が消えていくにつれ名残惜しさを感じるほどに――。