部屋の中が静寂に包まれた。


穏やかな陽射し。


私の心も不思議と穏やかだった。



“自分が何を言っているのか分かっているの?”

「分かってるよ。私は貴女の核を届けるまで生きていられる保証はないし、神様を頼れば薫君は確実に助からない。それなら貴女に掛けた方がいいと思って」

“私に?”



ちゃんと会った事はないのに、ガブリエルはなんだか昔からの友達の様な安心感がある。



「私が死ねばきっと契約は無効になる。そうなれば薫君の体と魂は危険に晒されると思う。だからーー」

“私にルシフェルを説得しろと?”

「あははっ、ばれちゃった?やっぱり自分勝手だよね、そんなの」



はじめは自分の為だけに、ガブリエルの忠告なんて御構い無しにルシファーと契約を結んだ。


それなのに、核を無事に届けられるか分からなくなったからって今はガブリエルを頼ってる。



“貴女はそれでいいの?”

「うん。薫君がお母さんと笑って幸せに暮らしてくれればそれでいいの。だからこんな私に力を貸してほしい」

“約束するわ。必ず泉堂 薫を助ける。そして人間界に帰す、と”



ガブリエルの言葉に、一人きりの部屋で笑みを零した。