徹先輩はニッと笑い、こう言った。



『あいつが自分から女に話し掛けてんの初めて見たんだけどなぁー』

「えっ?」

『それに群がってる女どもは伊集院の連絡先知らねぇよ』



そんなはずないでしょ――私は信じられなかった。


優樹菜はだいぶ興奮してるのか、徹先輩の袖を掴み揺さぶっている。



「そ、それどういう事!?乃愛にしか教えてないって事!?」

『お、落ち着けって!!女どもが嘆いてたんだよ、いくら伊集院に聞いても笑って誤魔化されるってよ』

「でも乃愛は伊集院先輩から教えてくれって言われたんでしょ!?」

「――うん」



興奮している優樹菜を落ち着かせようと、徹先輩が肩を抱いてトントン叩いている。


優樹菜は本当にこの手の話しが大好きだ。


一方土屋先輩は頬杖をついて、そんな優樹菜たちの様子を笑って見ている。


土屋先輩は特別格好良いわけではないけど、知的で誠実そうな人――だと思う。