絡み合う視線にドキドキした。


今更ながらここにいるのは私たちだけなんだと思った。


二人きり――。


薫君と同じ部屋で過ごした本の少しの時間。


その時間は心臓が壊れてしまうんじゃないかと思う程、もっと激しく心臓がバクバクしていた。



『お前は俺たちの敵なのか?』

「分かりません――」



私はただ薫君を助けたいだけ。


だけど、ガブリエルを大切に想っている人たちからすれば私は――。



「敵、なのかもしれま――ッッ」



厚い胸板。


洋服の上からでも男らしい体つきなんだと感じさせる程の逞しさ。


ラファエル様の腕の中は温かくて、とても広く感じた。



『傷だらけで倒れているノアを見付けて、助けたいと――力になりたいと思った。見ず知らずのお前が愛しくて堪らなかった』



私は黙って聞いていた。


どうすればいいか分からなかったから。



『ノアの想いの強さはよく分かった。だが、ずっとこの町で天使として過ごすのも悪くはないんじゃないか?』



天使の町で?


いくら天使の装いをしていても私は紛い物。


それに私は薫君の側に居たい。


今度は二人が笑って過ごせる世界で――。



「ありがとうございます。でも、それはできません――ごめんなさい」