ラファエル様は切なそうな笑みを溢した。


その顔を見て無性に泣きたくなった。



『ノア』

「は、い――」



温もりを含んだ声。


こんな私を労ってくれるラファエル様に対して申し訳ない思いが広がっていく。



『隣に座ってもいいか?』

「隣に、ですか?」

『あぁ』



優しい笑顔を見ていられず、私は顔を反らす様に頷いた。


椅子が床に擦れる音。


ラファエル様の靴の音。


靴の音とラファエル様の気配が近付くにつれ、私の心臓は煩くなっていく。


心音が漏れてる様な気がして急に恥ずかしい気持ちになった。


膝と膝が触れてしまいそうな距離に座っているラファエル様。



『ノア』



掬い上げる様に私の手を取り、ラファエル様はそのまま大きな手で包み込んだ。


私はみっともない程動揺していた。


目線を何処に置けばいいのか分からず、色んな場所を忙しなく見ている。



『顔を上げてもらえないか』

「――――」

『頼む』



私なんかに頼むだなんて――もっと偉そうにしてくれればいいのに――そうしてくれたらこんなに胸が苦しくならずに済んだのに――。