ラファエル様がため息をついた。


初めてかもしれない。


いつも明るくハキハキしているラファエル様がため息をついている姿を見るのは。



『あいつも肝心な事は何一つ言おうとしない』

「えっ――?」

『ミカエルの奴だよ』



ラファエル様は苦笑いを浮かべた。


その表情はどことなく寂しそうにも見えた。



『突然人間界に行ったと思ったらこれまた突然天界に帰ってきた。それも怒り狂ってな――』

「今も、怒ってるんですか?」

『いんや、今は冷静だよ。何かに焦ってるみたいだけどな。まさか怒り狂ってた原因がノアだとは言わないだろうな?』



私は口を結んだ。


怒りの原因をつくったのは私だ。


間接的に私がミカエルさんを怒らせた。


次にミカエルさんと遭遇したら私はいったいどうなっちゃうんだろう――。


そう考えただけで身が震えた。



『嘘だろ――。いつも冷静沈着なミカエルをあそこまで感情的にさせるなんて、ハッキリ言って至難の技だぞ。まぁこれについても理由は言えないんだろうがな』

「――すみません」