「どうして、ですか――?」



やっとの思いで絞り出した言葉。


この息苦しい状況に、今にも泣いてしまいそうだった。



『我々と装いの違う少女、もしくは悪魔との契約印が体のどこかに印されている少女を見なかったか――昨日そうミカエルに聞かれた。お前の胸元に印されているものは、悪魔と契約を交わした時に表れる契約印だろ?』



震える手で洋服の上からルシファーとの契約印をギュッと押さえ付けた。


いつ見られたの?


ッッ――手当て、してくれた時――。


きっとそうだ――。



『ノア』



凄く優しい声なのに、私の肩は大きく跳び跳ねた。



『ノア、俺を見ろ』

「――――」

『ノア』



震える唇を噛みしめながら、静かに顔を上げた。


ラファエル様の穏やかな笑みを見て、涙が溢れた。


どうすればいいのか分からない。


今の私に天界で味方をしてくれるのはきっとラグエルさんだけ。


他の天使にどれだけ優しく親切にされようと、ガブリエルの事は絶対に話せない。