ソフィアさんは微笑み私の手を取った。


手を引かれるまま泉の側で足を止めた。



「覗いてみて下さい」

「いいんですか？」

「勿論ですわ。私たち天使のお仕事の一つですもの」



私は地面に膝と手をつき恐る恐る泉の中を覗き込んだ。


泉の中にはたくさんの人が映っていた。


子供や大人、男性や女性、とにかく色んな人が映っている。



「あの黒髪の女性の小指をご覧になって下さい」



隣に腰を下ろしているソフィアさんが泉に向かって指を差し、私はその指先を目で追った。



「あっ、赤い糸だ――。でも二本伸びてますよ？」

「糸の本数は人によって違うんですのよ。彼女は今相性の良い異性がお二方いらっしゃるという事ですの」

「赤い糸は一本だけしかないんだと思ってました」

「私たち天使は下界に行き、ひかれ合う赤い糸を結び合わせ、出来る限り相性の良い方と出会うようお手伝いを致しますの。その中からどのお方をお選びになるかはご本人次第ですわ」



そうなんだ――。


何だか野外授業の一貫の様でこんな時にも関わらず胸がワクワクした。


私も赤い糸出てたのかな。


薫君と繋がる赤い糸――。