ヴォラク君は私の腕の中で暴れている。


私は余計に腕に力を込めた。



『乃愛ッッこのままだと君の体がこわれちゃうよッッ!!包帯に記された呪文は天使を拒絶する為のものなんだッッ!!』



私は首を大きく横にふった。


まるで子供が駄々をこねているみたいに。



「離さッッないッッ!!絶対ッッ、離さないから――ッッ!!」



――トクンッッ――――。


な、に――?


心臓が大きく跳ね上がり、体を支配していた痛みや重い感覚がなくなっていく。



“これが私が貴女にしてあげる最後のお節介よ。”



頭の中に響く懐かしい声。



「ガブリエル?」

“強く願いなさい。私と貴女は同じ存在なのだから”

『――乃愛?』



心配そうに私の顔を見上げるヴォラク君。


今度は私が笑顔を向けた。


リリスの方に顔を向けると怒り狂った目で私を睨み付けていた。


黒い翼を広げ、同じくおぞましい程の黒い靄がリリスを覆っていた。



「助けたい――ヴォラク君を助けたいッッ!!だからお願いッッ私に力を貸してッッッッ!!」



眩い程の光に包まれ、意識が少しずつ遠退いていった。


その時ヴォラク君の心配そうな声と、リリスの苦しそうな甲高い叫び声が聞こえた様な気がした。