洋服を捻り上げられているせいか首も絞まってきている。


血色に染まった瞳は私を捉えて離そうとしない。



「その名を口にしないで頂戴、二度と。なんてしぶとい女なのッッ」

「んッッ――」



私はリリスの腕を両手で掴み、引き離そうと必死だった。


何て力――ッッ。



「今ルシファーの隣に居るのは私よッッ私なのッッ!!私たちの仲を邪魔する者は誰だろうと許さないわッッ!!絶対にッッッッ!!」



リリスの金切り声が凄く遠くに聞こえる。


上手く呼吸が出来ず、意識が朦朧とし始めていた。


駄目――。


今意識を失う訳にはいかない――。


どれほど抵抗しもがこうと、リリスはびくともしなかった。


こんなに華奢な腕なのに何でッッ!!



「やっとこの苦しみから解放されるのね、やっと――」

「ッッ!?」



リリスの声は驚くほど穏やかだった。


安堵の色を含んだ笑みを溢し、振り上げ鋭く尖った爪を何の躊躇もなく降り下ろした。


私、ここまでなの――?


そう思った瞬間薫君の奏でるピアノの優しい音色が頭の中で再生された。