怖さを取り除こうと楽しい事を思い出そうとするが、何も浮かばない。


目に溜まる涙を何度拭おうが同じ事だった。


歩みを進めて行く内に、気付けば霧がかった場所へと足を踏み入れていた。


心臓がドクドクと速さを増していく。


どうしよう――来た道を引き返す?


後ろを振り返っても色濃く霧が掛かってしまっていて、何も見えなかった。



「誰か――助けて――ッッ。お願い、誰かッッ」



とうとう目に溜まった涙が零れ落ちてしまった。


泣いたってどうしようもない。


そんなの分かってる。


分かってるのに止まらない――。


焦りと不安を今すぐにでもどうにかしたかった。


私は何も見えない霧の中を無我夢中で走った。


泣いてるせいで上手く息が出来ない。


苦しい。


それでも私の足は必死に走り続けた。