緊迫した空気の中、ラグエルさんがフワッと柔らかい笑みを溢した。


ガブリエルはラグエルさんの事を凄く信頼しているようだった。


だからかな――私もこの人を頼りにしている気がする。



『私からのプレゼントです』

「プレゼント?」



ラグエルさんは微笑んだままパチンッと指を鳴らした。



『鏡をご覧になって下さい。凄くお似合いですよ』



部屋にある全身鏡に映る自分の姿を見て目を疑った。


嘘――これ――。



「つば、さ?」

『天界を翼のないものが彷徨いていては酷く目立ってしまいますから。コツをつかめばご自身の力だけで飛ぶことも可能ですよ』



翼に触れると、シルクの様に滑らかで凄く手触りが良かった。



『では我々は天界へ向かいます。何かあればお互いに連絡を取り合う様に致しましょう』



ルシファーは私たちに一度目を向けると、何も言わずに直ぐ様外に飛んでいってしまった。


前回会った時よりも態度が悪い気がしたのは気のせい?



『行きましょうか』

「はい」

『私が手を引きますから、貴女は羽を動かすイメージを頭の中で思い描いて下さい』



差し出されたラグエルさんの手を取り、私は不安と希望を胸に静かに空へと羽ばたいた。