『では始めて下さい』



ルシファーの手が伸びてきた。


何をされるのか分からない恐怖。


その恐怖をまぎらわす様に目をギュッと瞑り、拳に力を込めた。


胸を中心に気持ち悪さが少しずつ広がっていく。


体が震えてる。


でも震えも気持ち悪さも一瞬にしてなくなり、なんだか体が軽くなったように感じられた。



『目を開けろ』



感情のないルシファーの声を合図に、私はゆっくりと目を開けた。


自分の体に触れてみるが、何一つ変わってないような気がする。



「私に何したの?」

『自分の目で確認しろ』



首を傾げるとルシファーがクイッと顎で後ろを指した。


何なの?



「ッッ!?」



振り向いた私はありえない光景に言葉を失った。


何で?


何で私がもう一人いるの!?


床にはもう一人の私が力なく横になっていた。