震える私の手を、今度はヴォラク君が笑顔で小さな手で包んでくれた。



『乃愛、君の望みは何?』



私の望み――。



「――薫君を助けたいッッ」

『その望みを叶えられるのはルシファー様だけ。望みを叶えたいなら信じる者を誤っちゃ駄目だ。そして、何があってもその強い想いを忘れないで――』

「ヴォラク君――」

『契約者の想いが強ければ強い程、悪魔の力の糧となるんだ』



私はもう決めたんだ。


何があろうと薫君だけは助けるって――。



『さぁ、君が望む未来の為に行っておいで。決して後ろを振り返っちゃ駄目だよ』

「ヴォラク君、ありがとう。また会えるよね?」

『また直ぐに会えるよっ』



笑顔のヴォラク君に見送られ、私は竜と一緒に先を急いだ。


途中凄まじい程の風圧を背中に受け、光と闇をすぐ近くに感じた。


何度も後ろを振り返ろうかと悩んだ。


でも私は唇を噛みしめ、拳を握りしめ前だけを見続けた。


私の今するべき事はここで立ち止まることじゃない。


ルシファーの所へ急がないと――。