アスモデウスさんたちからまだそんなに離れていないところで、竜が急に動きを止めた。



『乃愛、約束の場所まで僕は一緒に行けそうにない』

「どうして!?」

『あいつを食い止めなきゃいけないみたいだからね』



目の前には真っ白な翼を六枚広げた赤毛の天使がいた。


六枚――。



「あの時の――?」

『やはり見られていた様だね。ガブリエルに触れる者は誰であろうと許しはしない』



土屋先輩が怪我をしたのは私に――ガブリエルに触れたからって事?


天使が人間に怪我を負わせるなんて――。



『あんたって悪魔よりタチ悪いよね』

『ガブリエルを置いて行くなら見逃してやろう』

『そういう上から目線な発言はリリス様だけで十分だよぉーっだ!!それにミカエルを殺ったとなれば僕の悪魔としての名もあがる訳だし、引く訳にはいかないよねっ』



この人がミカエル?


ルシファーの弟――。



『お前が僕を?笑えない冗談だね』



白い翼に神々しいほどの光を纏いながらも、ゾクッとするような冷たい笑みはルシファーにとても良く似ていた。