リリス様――。


彼女はアスモデウスさんにすら冷ややかな目を向けている。


この態度と口ぶりからして、ルシファーと同じくらい偉い立場の悪魔なんだろう。


それにしてもこの露骨なまでの威圧感――感じ悪い――。



「そこを退きなさい」

『それはできません。どうかお引き下さいませ』

「ヴォラクといいお前といい、私の言う事が聞けぬというのか」

『私どもはルシファー様に仕える身でございます。どうかご理解頂けないでしょうか』



リリスは目を吊り上らせ、標的を変えるように私を睨み付けた。


恐怖のあまり体が震える。



『ヴォラク、乃愛を約束の場所へ連れていきなさい』

「えっ?でも――」



約束の日は明日だよね?



『事情が変わってしまった為、一日早いが今日実行する事になった』

『承知しました』



ヴォラク君はしっかりと頷き、竜は空に向けて飛び始めた。



「アスモデウスさんは!?」

『アスモデウス様ならきっと上手くリリス様を宥めてくれるよ』



心配や不安を抱きつつも、私にはどうする事も出来なかった。


私はどうしていつもこう無力なんだろう――。