『心配せずとも大丈夫ですよ。魂を飲み込んだだけで吸収はしていない筈ですから。ルシファーの悪ふざけです』

「悪ふざけ――?」



ルシファーはそっぽを向くとベッドから離れソファーに座り直した。


そうだよね。


契約があるのに本当に薫君の魂を食べちゃう筈がないよね。


でもあの時ひっぱたきたくなるくらい渇となったのは、私の気持ちよりもガブリエルの気持ちの方が大きかった様に思える。


だからこそアスモデウスさんの力を押し退けられたんだと思う。



『私はそろそろ失礼致します。ガブリエルの力が現れてしまったのは多少私のせいでしょうから』



ラグエルさんは白い翼を広げると、壁の向こうへと消えてしまった。


静まり返った部屋の中は居心地がとても悪かった。



『後は任せたぞ』



ルシファーはそう言い残すと早々に何処かへ行ってしまった。


えっ――私はどうしたらいいの?


アスモデウスさんとバチッと目線が重なり緊張が走る。


だけどさっきまで怖い雰囲気だったのに、今は出会った時の柔らかい雰囲気に戻っていて安心した。