嫌な予感がしてルシファーを薫君から離そうとした。


だけど身体が動かなくて彼に触れる事すらできなかった。


アスモデウスさんと目が合い、彼は口を開く事なくゆっくりと首を横にふった。



「薫君ッッ!!」



繋いでいた手の中は微かな温もりだけが残り、空気を握りしめている。


ルシファーの手の内には青みがかった丸い玉が握られていた。



「薫君をどうしたのッッ!?」



目の前で眠っていた薫君は忽然と姿を消してしまった。



『喚くな、耳障りだ。泉堂 薫の器を地獄に移しただけだ』

「なん、で――?何でよッッ!!」

『契約が成立するかどうかも分からない今、泉堂 薫を生き返らせる訳にはいかない』



核が無事に取り出せなかったら薫君も助からないって事!?


一度は生き返らせてくれたのにそんなのってッッ――そんなのってないよッッ。



『ガブリエルだけが生き延びるか、それともお前たちが生き延びるか見物だな』



そう言って彼は手に持っていた丸い玉を口に含み飲み込んだ。