ここから逃げなきゃ――ッッ。


きっとこの人は悪魔でもヴォラク君やアスモデウスさんとは違う。


この人は危険だと、頭の中でサイレンが鳴り響いている。



「薫君、薫君ッッ!!乃愛だよッッ!!」



体を揺すっているのに、起きる気配が全くない。


何で!?


背後からクスクスと笑う声が聞こえ、私はその笑っている人物を睨み付けた。



「何が可笑しいの?」

『人間とはどこまでも愚かな生き物だな。見事なまでの失敗作だ』



何なの!?


人を馬鹿にするにも程がある。



「貴方がみんなが言うルシファーでしょ!?薫君にいったい何したの!?」



恐怖が完全になくなったわけじゃない。


だけどこの場をどうにかして切り抜けなければという思いの方が強かった。


それでもルシファーの顔を見ると、押さえ付けている恐怖が段々と膨れ上がっていく。