想像できないくらいの衝撃と痛みに襲われるだろうと覚悟した。


だけどいっこうに壁らしきものにぶつかる気配がしない。



『お待たせして申し訳ありません』

『ちょうど終わったところだ』



低くゾクゾクする様な声。


色気のある声に酔ってしまいそうだった。


私は奮える心臓を落ち着かせるように深呼吸をして、そっと目を開けた。


こ、こ――部屋の中!?


目の前には偉そうにソファーに座っている男性がいた。


その彼に私は一瞬にして目を奪われた。


薄暗い中でもガラス玉の様に輝くダークブルーの瞳。


噴水に映った人の事を思い出した。


だけど雰囲気が全く違う。


噴水で見たダークブルーの瞳はとても優しい瞳をしていた。


でも今めの前で私を見つめているダークブルーの瞳は、鋭く突き刺す様な瞳をしている。


怖い――。


怖いのに目を反らせない。


危うさだけではなく、見た者を虜にしてしまう程の妖艶さを兼ね備えているからかもしれない。