菜々子さんとの会話は楽しくて、時間が経つのも忘れつい長居してしまった。



「初対面にも関わらずベラベラとすみません」

「いいのよ、気にしなくて。今度は薫と一緒にお家に遊びにいらっしゃい」

「いいんですか?」

「勿論よ。娘ができたみたいで本当に今日は楽しかったわ」

「ありがとうございますっ。お言葉に甘えて今度はお家にお邪魔しますっ」



私は菜々子さんと笑顔でお別れをして、私たちは病院の外にあるバス停へと向かった。


帰りは繋がないんだ――。


繋がれたら繋がれたで複雑な気持ちになるくせに、自由な両手を見るとそれはそれで切ない気持ちになった。



『家まで送る』

「い、いいよッッ!!一人で大丈夫だから」

『いいから送る』



有無を言わせない言葉に、最終的には頷く事しか出来なかった。


歩いてる時もバスに乗ってる時も電車に乗ってる時も、私たちに会話らしい会話はなかった。


それでも胸のトキメキはおさまる気配はなかった。


不思議――ただ傍に居てくれるだけでこんなに心が満たされるなんて――。