Purewhite Devil

噴水の中に浮いている白い羽。


そして不規則に流れ動く水。


水面にボヤけて映りこむ黒髪の――。



「――ッッ」



ハッとして目を開けた先には、凄く切ない顔をした望先輩がいた。


望先輩は私の頬に唇を落とすと、ゆっくりと体を離した。



『ごめん乃愛ちゃん』

「え――?」

『家まで送るよ』



そう言って私の手を引いた望先輩はそのまま私を抱きしめた。



『心の準備ができるまで待つと言ったのに泣かせてしまうなんて――本当にごめん』



私、泣いちゃったんだ――。


誰かも分からない黒髪の人を見て、何だか凄く幸せな気持ちになった。


でもその直後深い悲しみと後悔の念に襲われた。


男かも女かも分からない。


顔だってハッキリとは分からなかった。


だけど、ダークブルーの力強くもほのかに優しさを帯びた瞳は、とても印象的だった。