『僕はそろそろ寝るよ。人間にとって睡眠はとても大切なものだからね』

『では最後に一つだけ宜しいでしょうか』

『いいよ』

『どの様な方法で彼女の核を目覚めさせるおつもりですか?』

『僕の力をあの子の体に流し込むんだ。そうすれば本能のままに核は力を吸収する』

『そうですか。分かりました』



ラグエルは靴を履き、スッと椅子から立ち上がった。


そして足音をたてずに窓へ向かって歩き出した。



『核が力を吸収したとしても、その力を魂との融合に使用しなければ何の意味もありませんよ』



窓枠に足を掛けたラグエルは振り向きそう言った。


ミカエルは微笑みながら言葉を返した。



『体の外に力を放出出来ないようにする事なんて容易いよ。内に秘めた力は行き場をなくし膨張し始める。あの子の体を守りたいなら魂と融合する他に方法はないよ』

『貴方は昔から悪知恵だけは働きますね』

『――兄程ではないよ』



ミカエルの悲しみに満ちた笑顔に何も言葉を掛けないまま、ラグエルは翼を広げ空高く飛んでいってしまった。


ラグエルの姿が見えなくなるまで、ミカエルはずっと外を眺めていた。