喜びの笑みを見せた男に、ラグエルは彼女の想いを告げた。



『彼女は人間の少女を犠牲にしてまで天界に戻りたいとは思っておりませんよ』

『今はそう思っていても、天界に戻ればその想いも直ぐになくなるよ』

『天界に住む我々は人間に直接手を加えてはなりません。知識を与えることも許されません。神の右に立つことを許されている貴方なら、誰よりもその事を承知しているはずです。そうでしょう、ミカエル――』



光に照らされた男の影は六枚の翼を象る様に広がっていた。



『今回の事、神は何て言ってるんだい?』

『――まだ何も仰っておられません』

『そう――良かった』

『私は貴方が堕落していく様など見たくありません』



ミカエルは柔らかく微笑んだ。



『僕はまだ、お前に其ほど嫌われていないようで安心したよ』

『何を馬鹿な事を仰っているんですか。今後の行いによっては、軽蔑の対象にさせて頂くかもしれませんよ』