中川先輩の一言に私たち3人は驚いた。

 【俺は柳原可愛いと思うけどな】

 私、単純なのかな。
 中川先輩にすごく
 ときめきを感じる…。


「またまたぁ~!海斗同情は、優愛に失礼だろ~」


 ゲラゲラ笑うこうちゃん。
 私は中川先輩を見つめた。

 箸で黙々と食べる中川先輩は
 その言葉をスルーした。


 なんだ、同情だったんだね。
 なんかショックだなぁ。
 …あれ?何でショック受けてんの私。

 意味わかんない。
 顔を赤くする私を見て、
 桃、こうちゃんは一瞬
 息が詰まったように私は思えた。

 そんなとき、
 教室の隅で何やら怪しい影があった。


「最近柳原調子こんでね?」

「沼田さん!一度シメた方がいいですよ」 

「そうね。でも、今日は様子を見ましょう。明日…事を進めましょう」

 【柳原、あんただけ特別扱いなんて許せないわ】




 放課後。
 下駄箱へ向かうとこうちゃんと
 中川先輩が待っていた。


「優愛今日バレー部もあるだろ?俺らと一緒に行くべ!」


 桃は吹奏楽部なのでもう
 部活へ行ってしまった。

 こうちゃん達と一緒に
 体育館へ向かった。

 体育館は広くてつい最近新しく
 建て替えたばかりだった。

 久しぶりのバレー。
 練習に早速取り掛かろうとしたら
 部長が今日は顧問来れないから
 自主練だという。部員のメンバーの中には
 それを聞いて帰る人もいる。


 このぐだぐだ感なんとかならないかなー。

 部員は全員で12名。
 帰ったのは7人。残っているのは
 部長と一年生だけだった。


「今日は各自ストレッチなどして、早めに終わらせましょう。」


 部長の言葉のあとに動く一年生と私。
 はぁ…試合したかったなぁ。


「優ー愛っ!」

 ドゴッ

 バスケットボールが頭に当たる。

 後頭部に激痛が走った。
 手で押さえながら、立ち上がる私。


「こーちゃーん?今のはないんじゃない?」

 ゴゴゴゴゴゴ。

「やっべ!」


 血相を変えて
 一目散に逃げるこうちゃん。


「こらぁぁぁ!待ちなさーい!」


 バスケットボールを抱きかかえながら後を追いかける私。
 100メートル15秒の私。
 わりと速い足ですぐにこうちゃんを
 捕まえ、喧嘩が始まった。

 幼稚園児の喧嘩。
 はたからそう見える私とこうちゃん。


「痛ててて…っやめろ!馬鹿女っ」

「私は馬鹿じゃないもん!」


 体育館の隅で喧嘩する私たちに
 周りは笑っていた。
 そして、あの人も。


「あれ?珍しいんじゃない?中川くんが笑うなんて」


 バレー部部長が問う。
 中川先輩は私を見つめていた。


「飲み物飲んできます。」


 体育館を出る中川先輩。


「まさか…ね」


 笑う部長。