こうちゃんに呼ばれて
 ふと窓の外に目線をやる。

 隣には中川先輩が
 遙か遠くどこかを見つめていた。  


「きゃあー!大谷先輩に中川先輩だわー!」


 クラスの女子が一斉に騒ぐ。
 相変わらずうるさい野獣間たちだ。


 本当中川先輩なら分かるが
 あの馬鹿が何でモテるのか
 さっぱり分からない…。


「ジャージ昼に返すからな!」


 そう叫ぶと下駄箱へ戻るこうちゃん。 
 中川先輩も後ろへ着いていく。


 本当あの2人は仲良いよねぇ。





 昼。

 チャイムと同時にガヤガヤする。
 一階の売店には行列、
 屋上や外で食べる女子やカップル。


 私は机を二つ並べて
 桃と昼食を取る。


 何気ない会話で、
 桃が突然私に問いてきた。



「…ねぇ、優愛はこうちゃんと中川先輩どっちが好き?」

「はっ?」


 思わず唐揚げを箸から落とす私。

 桃の奴急にどうしたんだろう。


 その時だ。


「おい、ばか女!ジャージだぞ!」


 私の背後にこうちゃんと
 中川先輩が立っていた。

 ジャージを私の鞄の上に投げ、
 隣の席に腰を下ろすこうちゃん。

 中川先輩は反対側の
 私の左側に座った。


「席ここでも大丈夫か?」


「え、あー大丈夫ですよ♪」


 笑顔で答える私の隣でこうちゃんは
 私に答案用紙を渡してきた。


「これ見ろよ!俺、23点とったんだぜ!?すごくねーか?♪」


 ニコニコしながら、私の前に
 突き出す。あのー。


「あー、ここに23点の答案で喜んでる馬鹿がいるー。」


 超棒読みの私。

 そして、これが私の日常生活の
 一つであるこうちゃんとの喧嘩だ。


「んだと!おめーこそ、前回のテスト何点だよ!?」


 ムキになるこうちゃん。
 私はあざけ笑って席から立ち上がる。


「あたし?26点だよ!!」

 どーん!
 胸を張る私。


「優愛、それ自慢にならないって」


 苦笑いする桃。
 黙々とお弁当を食べる中川先輩。


「おめーも馬鹿じゃねーか!!人のこと笑う前に勉強しろっつーの!馬鹿女」


「23点の答案のあんたなんかに言われたくないわ、馬鹿タコ」


 お互いムスッとする私とこうちゃん。
 桃は困りながらオロオロしていた。



「あーぁ、馬鹿女は馬鹿な挙げ句にぶすだしなぁ!!」


「何ですって!?」


 いがみ合う私たちに中川先輩は。


 このあと、中川先輩の言葉に
 私は驚いた。


「…俺は柳原可愛いと思うけどな。」


 ボソッとつぶやく中川先輩。


 辺りが一瞬静かになった。