どうして、知ってるの?私がココア好きって。
 そんなこと聞けないの分かってる。
 だけど、なぜか嬉しい。何でかな?
 まだ中川先輩を意識してるから?
 好きだから?

 私の顔を見て中川先輩は小さく呟いた。


「嫌いだったか?ココア。」


 中川先輩の言葉に


「ち、違います!好きです!」


 立ち上がり、左手を机につけ
 右手を握る私をみんなが見る。
 あれ?何でみんな私を見てるの?
 夫婦で来てる人も店員さんも、
 小さな子ども連れのお母さんも。
 周りのみんなが私を見てる。どうして見てるの?

 中川先輩が驚いている。
 何で?私何か間違ったこと…。
 あ!! 我に返る私。


「…ココア。好き、です。」


 主語を付け忘れて、周りの人には中川先輩に
 まるで告白したかのように
 見えていたのだ。恥ずかしい。
 もぉ、桃言ってくれればいいのに。
 桃の方をチラ見すると、
 ポカーンと口を開けてる桃がいた。
 あ、でもこうちゃんになら!!
 パッとこうちゃんを見ると
 こうちゃんは携帯をいじっていた。

 やっぱりこうちゃんも
 勘違いして怒ってるのかな。
 私本当ばかだ。ため息をつくと、
 私の携帯のバイブ音が鳴る。

 あれ、誰からだろ。メール受信の文字。
 そして携帯を開くとこうちゃんからだった。
 目の前にいる相手に何でメール?
 不思議に思いながら受信ボックスを開くと。

【ばーか、主語忘れんじゃねーよ】
 の文字が。パッとこうちゃんを
 見ると携帯を閉じて私を見てるこうちゃんがいた。
 明らかに怒ってる様子。
 こうちゃんは桃に指を指して


「わりぃ。桃、席替わってくんねぇか?」


 桃が了解の返事をするとこうちゃんは立ち上がる。
 それに続いて中川先輩が席から立つ。
 こうちゃんと桃は席を交換する。

 何してんの、こうちゃん。
 こうちゃんはゆっくりと腰をかけると私の肩を抱き
 右手で私の頭を軽く叩く。


「ばーか、優愛。」


 そして、私の髪をくしゃくしゃにする。
 こうちゃんは優しく笑う。