必死に走るこうちゃん。
 文句を言いながらも、ちゃんと
 走るこうちゃんの姿を見て
 私は感心した。  

 そこがあいつのいいとこなのかもね。
 ちょっと見直しした。


 こうちゃんの隣には、
 中川先輩も走っていた。

 先生に怒られたわけでもなく
 ただただこうちゃんの横で
 ずっと走っていた。


 中川先輩と出逢ったのは
 4月のある水曜日の時だった。

 私が体調を崩して学校に行けず、
 一人で家に待機してた時でした。
 

 39度2分の高熱。
 熱が高いせいか頭がぼーっとする。

 立ち上がれないほどだった。 

 そして、いつの間にか
 夕方まで眠りに入っていた。


「おーい、優愛。大丈夫かぁ?」


 突然こうちゃんの声がした。
 私はゆっくりと目を開け、
 ドア付近を見つめる。

 そこには、こうちゃんと
 知らない人が立っていた。


 誰だろう。


「こうちゃーん!ちょっとこっちに来て手伝ってくれる?」


 台所から聞こえるお母さんの声。


「はーい!今すぐ行きますんで!なぁ、海斗。優愛をしばらく見ててくれ。」

「…」


 バタン。
 ドアの扉が閉まる。


 しーん。
 辺りは一瞬静まり返る。

 なにこれ…すごく気まずい。


「…熱はあるのか?」


 突然、相手から私に問いてきた。
 私は熱のせいで
 体が動けず応答もできなかった。


 すると、その人は
 私に横まで近付いてきた。

 横に置いてあった椅子に
 腰を降ろした。


「…」


 彼は無言で私を見つめた。

 何でこの人話さないのかな、
 確か前表彰されてた人だなぁ…
 名前なんだっけ。


「中川海斗。」

「…え?」

「俺の名前。」


 彼は私の棚から本を取り出し
 本を読み始めた。

 第一印象、クール。


 こんなクールな人
 私と同じ学校なんだぁ。


 これが、私と中川海斗の
 出逢いだった。熱でそのあとの
 記憶はなかった。



 いつもこうちゃんの隣にいて、
 あまり話していない無言な彼。

 そんな中川先輩も
 ひょんなことからモテていた。


 まぁ、あんなに
 変わったコンビがいれば
 誰だって好きになるわなぁ。


 あー、早く私も恋がしたい。



 チャイムの鐘が鳴る。

 一斉にガヤガヤする学校。


 そして、


「優愛ーー!」


 窓の外からこうちゃんの声が聞こえる。