こうちゃんと付き合い始めた最初の朝は
 いつもより違って見えた。
 髪の毛がはねてる。やだな、直さなきゃ!
 自然といつも気にしなかった事が
 気にするようになっていた。

 化粧…しようかな。
 私は久しぶりに化粧箱を開いた。
 顔にファンデを塗って
 ピンクのチークをのせて、まつげには
 ビューラで上げてマスカラも塗った。
 髪はアイロンで内巻きにしながら、
 巻いてみた。む…難しいな、これ。
 慣れない体験をしたけどなんとか
 甘い感じの雰囲気になった。

 あ、やばいこんなことしてる間に時間が過ぎてる!!


「…行ってきまーす♪」


 笑顔いっぱいの明るい声でドアノブを掴んで扉を開ける。


「優愛のやつ、朝から元気だなぁ。」


 新聞を手に取りながら新聞を読むお父さん。


「隣の家のこうちゃんと付き合い始めたんですって」


 お父さんの前にコーヒーを出すお母さん。


「おぉ、そうか。付き合い始めたのか。…て、なんだとーーー!?」


 お父さんの声が家中に響いた。
 クスクスと笑いながら食器を洗うお母さん。
 玄関を開けるとこうちゃんが待っててくれていた。


「あ、こうちゃん…」


 私の声に気付いて、私の方に振り向くこうちゃん。


「おぅ。優愛おはよう」


 八重歯を見せて笑うこうちゃん。
 私に近づいて手を握る。あ、手…。
 こうちゃんの左手は大きくてゴツゴツしてて
 男らしい手だったけど長い指が大人の感じがして
 不思議と意識した。
 緊張して下を向いてる私に
 こうちゃんは笑って私の顔を覗き込んだ。


「緊張してんの?優愛。」


 ニカッと笑うこうちゃんを見る。
 前言撤回だ。コイツもう知らん!!
 こうちゃんの手を離してすたすたと歩き出す私。
 こうちゃんはそんな私を見て慌てて私の手を握る。


「優愛っ!ごめんてば。可愛いから…今日可愛いから…その。俺…」


 照れてるこうちゃんを見てまた昨日みたいな愛しさが
 混みあがってきた。こうちゃん、可愛い。
 そっぽを向いて私の手を握るこうちゃんは
 なんだか、可愛く見えた。