「…!」


 その場所に柳原がいた。
 うずくまって泣いている柳原。
 俺は無我夢中で柳原に抱きしめた。
 驚く柳原。俺は、


「お前が泣くと、困る…」


 そう言った。俺のいっぱいいっぱいの気持ち。
 柳原が俺の腕を掴む。震えていた。


「中川先輩、私大丈夫です!」


 笑って俺から離れる柳原。
 顔ひきつってんだよ。お前はどんだけ人に気をつかうんだ?


「…」


 無言で柳原の手をつかみ抱きしめる俺。


「中川せん…」


 我にかえって俺は柳原から離れる。
 泣きはらした目をしている柳原。
 泣くな、アイツを想って泣くな…。
 何も言えない。言えるわけがない。
 だって、親友の好きな奴だから。