新城高校との試合で俺は自分の気持ちに気付いてしまった。
 柳原が光汰の名前を叫んだ時。一瞬胸が痛んだんだ。
 こうちゃん。俺にはない呼び方。
 俺の名前を呼ぶときは下を向いて先輩、そう呼ぶ柳原。

 だから、妬いた。光汰に初めてムカついたし、
 負けたくないって思った。
 そんなとき、光汰に柳原とデートしてくれと頼まれた。

 光汰のやつ、俺に気を使っていた。
 そんな事で奪おうとはしない。光汰が傷つくだけだからな。
 隣で笑う柳原を見て、何度も何度も、胸が苦しくなった。
 初めて女に抱く感情。俺は、バレないように無表情を浮かべる。
 楽しいと思ってくれてないかな。何したらいいのかな。
 いろいろ考えすぎて腹が空いて思わず呟く俺に笑って
 お弁当ありますよ、その言葉。
 食べたい、そう思ったから全部食べようとした。
 自分もお腹が空いているのに俺の顔を伺う柳原。

 心配しなくても弁当、うめーよ。
 最高にうまい飯だ。笑って言いたかったけど
 緊張して何も言えなかった。
 川辺に着いたときも、
 何を話せば良いのか分からなくて
 つい、余計なことを言ってしまった。
 柳原には何にもしねーよ、そう言ったとき柳原は
 下を向いて悲しい顔を浮かべた柳原。

 ごめん、柳原。初めて傷つけた。初めての言葉。
 本当にごめんな。

 次の日学校で光汰が柳原を見つめるのを見て
 これでいいんだって思った。
 俺は好きになってはいけないんだって思ったんだ。
 光汰の幸せだけを祈ってた。
 そう思ってた。なのにアイツは。
 嫉妬で我を忘れて柳原を傷つけた。許せなかった。
 だから、俺は。


「アイツを大事にできねーんなら、俺は我慢しねぇ。」


 そう言い放ち、柳原を追った。
 校舎を回る俺は、息を切らしながら柳原を探した。


「どこだ…?」


 その時ふと、ある場所が浮かんだ。あの場所なら。
 急いで走る俺。向かう場所は、校舎裏の俺が
 柳原を意識した場所だ。