cocoa 上


 足の裏に激痛を感じた。

 そうだった、窓割ったからガラス下にあったんだった。
 こうちゃんが私の変な顔を見て心配して、近寄る。


「おい、お前。まさか…足切ったんじゃ」


「はぁ!?そんなわけないし!」


 ムキになる私を見てこうちゃんは
 いいから見せろ!大きく怒鳴った。
 そして、血が出ている足を見せると
 こうちゃんは手当てをし始めた。
 無言のこうちゃん。つい、私も我を忘れてこうちゃんを見つめる。


「…お前本当怪我ばっかだな。まぁ俺もだけど」


 苦笑いするこうちゃん。
 ごめん、小さい声で呟く私。
 こうちゃんはそれを聞くと私の頭を撫でながら


「いいよ、別に。おめーは悪くねぇ♪」


 満面の笑顔のこうちゃん。こうちゃん…。
 その時ふと、思い出した。桃のあの言葉。


 【だから、優愛こうちゃんを捕らないで…】



 そうだ。私はこうちゃんを
 好きになってはいけない。


 私の好きな人、それは。中川先輩なんだから。

 次の日。今日は日曜日だ。
 部活がある私は早起きして行ってきます、そう家を出ると
 桃が私の家の前に立っていた。

 昨日の事は何事もなかったように笑っておはようを言う桃。
 いつもの桃だ。一瞬喜ぶ私。こうじゃなきゃ
 嫌だもん、絶対。桃とは喧嘩したくない。

 二人で学校へ向かい、何気ない会話やいつものコンビニでお弁当を買った。
 学校に着くと、桃は校舎に入っていった。
 私は体育館へ向かい、更衣室でジャージに着替える。
 体育館には、バスケ部もいた。怪我で次の試合までは
 出れないこうちゃんの指導を受けてる部員達。
 そして、一人黙々と練習をする中川先輩。

 昨日は公園と、川辺だけのデート。少ししょんぼりする私。
 中川先輩を見ている私を見て、部長がとんでもない事をした。


「中川くーん!ちょっとこっちに来てくれない?」


 部長の大きな声が、体育館に響く。
 その声に反応してピタリと体を止める中川先輩。

 え!?部長!?驚く私をよそに、中川先輩はバレー部を見た。

 いやーーー!こっち見てるー!
 勘違いやらなんやらで大暴走中の私。困惑してる。


「優愛ちゃんが一人で、ボール運ぼうとしてるの。一人じゃなんだから、手伝ってくれない?」


 無言の中川先輩。
 何言い出すのこの人!中川先輩が手伝ってくれるわけ…